トリック交響曲
奥付
著者 泡坂妻夫
発行所 文藝春秋
初版 1981/2・1985/3/25
定価 ハードカバー本1,200円(252ページ)・文庫本340円(282ページ)
Ⅰ トリックの時代
トリックと嘘
「では、嘘のない世界は天国だろうか?」
トリックの正体
「すぐれた演技者は、嘘とトリックの熟達者でなければならない。」
トリックの美しさ
「トリックの世界は単なる欺しやぺてんと言えないほど、広大でかつ深い。」
Ⅱ トリックと奇術
二人の友へ
「彼女は笑いながら答えた。――奇術を覚えていてよかったな、と僕は思った。」
奇術の笑い
「賞賛と笑い、欺かれることと笑い、それらをすんなりと結びつけてしまうのが人間の芸なのである。」
奇術の踊り
「奇術への道は実に自由である。」
述べて作らず
「つまり、作り出すのではなく、受け継いだ奇術を、自分の言葉で、述べるのである。」
ぶっつかる
「自分の苦心したアイディアを、すでに先人が考え出していたと知ったときの落胆は、実際にこのことを経験した者でない限り判りっこない。」
種明かしのすすめ
「奇術家が種明かしをしないという理由は何一つない。」
ふたりでゾンビボウルを
「僕はボウルを手にしながらどきどきし、これは大変なことになったと思った。」
奇術とは
「奇術に対する誤解の多くは、奇術師が奇術とは何かを明確に理解していないからだと思われる。」
Ⅲ 探偵小説と奇術
隣の部屋より
「トリックがいつも傍にないと、どうも気が落着かないからです。」
探偵小説と奇術
「たとえ小さな奇術にしろ、オリジナルを持っているということは、どんな奇術家の前に出ても心強い。」
マラソンとシャクトリムシ
「マラソンを始める気はないが、自分の所業は、どうやらマラソンと同じようだと思えてくる。」
ホウレンソウの食べ方
「吹き替えなどというもののない時代だったのは幸いだった。」
ミステリーと奇術 トランプ/シルクハット/ジャリ/眼球/秘密の道/磁石/奇術材料店など
「ミステリーと奇術は兄弟分のような関係でいて、奇術を材料にしたミステリーは必ずしも多くない。」
空を飛ぶ
「浮揚というと、忘れられない奇術がある。卵がひとりでに空中に飛び去るというのである。」
受賞と落選 日本推理作家協会賞発表の日/直木賞発表の日
「受賞ぐらいでうろたえるでないぞ。」
Ⅳ トリックのある話
ダビンチの欺し絵
「その当時、芸術家は科学者であり魔術師であり詐欺師でありからくり師だった。」
身体に悪い奇術
「舞台に立って観客を不思議がらせ、楽しく欺すという作業は、泥棒が正規の金を払って品物を受け取るほど、難しいことである。」
田田囚囚
「そういう文字だけ集め、名前など作って遊んでいると、すぐ一日が終ってしまった。」
一つのトリック
「私の買い物はこの世の中に二種類しかない。本と、奇術の材料だ。」
眠れなくなる本
「その頃、奇術書の出版はごく稀で、たまに一冊でも手に入れようものなら、隅から隅まで読み終わらなければ眠ることが出来なかった。」
消えた奇術
「読んだだけでも不思議でしょう?実際に見ればもっとびっくりします。お見せ出来なくて、私としても残念ですが。」
奇術の伝授本
「解説の「とかく其座敷のきてんがいるなり」という注意書きは、見せる人、時を考えよということなのだろう。」
奇術病
「一時期、毎週日曜日になると、奇術クラブに出掛けて行って、朝から夜中まで、奇術にまみれていなければ生きてゆけないような時代があった。」
わたしの好きなジョーク
「これは石田天海師から教わり、長年愛用しているジョークである。」
切って、埋める
「これは大傑作だと自分一人だけで満足している正方形切断大パズルだ。」
Ⅴ ちょっとトリックを離れて
七福神巡り
「お銚子二本で無官の太夫と洒落る。」
紋帳
「上絵師の描いた紋と、そうでない人の描いた紋の差は歴然とした差がある。それほど、紋章の形には、厳しい日本人の美意識がこめられている。」
五円の縁
「その場で君は、私の宝物になった。」
写真めん
「即ち「蒐集は古い物ほど値打がある」。」
Ⅵ トリックの交響曲
「この分類表と取り組んでいるうちに、トリックは絶対になくならないものだということが判るようになった。」
一 未知の現象
A 見慣れぬ自然現象を演出するトリック
B 自然の原理に手順を加えるトリック
C 訓練によるトリック
二 事実の誤認
A 錯覚
B 心的錯誤
C ミスディレクションとレッドヘリング
三 知覚の限界
A 隠蔽
B 偽装
C 裏面工作