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カラー・ユニバーサル・マジック

和書,日本語ノート,理論系

森司

書誌情報

発行日 2019年8月20日
定価 500円(PDF版 14ページ)
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世の中には色弱・色盲といった色覚異常の人がいます。
実は一般色覚の人でも色の見え方は一人一人微妙に違っていて、色の識別はできていても全員がまったく同じ色を見ているとは限りません。あなたが「黄緑」だと思っていても、人によっては「黄色」っぽく見えたり「緑」っぽく見えたりしているわけです。色覚異常の人はその見え方の幅が一般色覚の人よりも大きいというだけのことで、多少の差はあれど「色の見え方は皆違う」という認識をまず持つことが大事です。

カラー・ユニバーサル・デザインとは、そういった全ての人達が見やすいように配色を気遣ったデザインのことで、そのようなマジックを「カラー・ユニバーサル・マジック」と筆者は名付けています。この本はマジックの作品集ではなく、カラー・ユニバーサル・マジックの認識を広める目的で書かれています。

日本眼科医会によると現在、日本人では男性20人に1人、女性500人に1人の割合で色覚異常の人がいるそうです。男女の差が大きい理由として色覚異常を引き起こす遺伝子はX染色体に存在するということが挙げられます。男性の場合はXYと1個しかないX染色体にその遺伝子があれば色覚異常になりますが、女性の場合はXXと2個あるうちの1個だけであれば色覚異常は表に出てこないとのこと。学校のクラスに1人は色覚異常の男子がいると考えれば意外と身近な存在であることが分かります。もちろん男性ほどではないとはいえ、実演機会の多いマジシャンほど色覚異常を持つ女性にもマジックを演じる可能性が高くなるのは紛れもない事実です。

筆者自身も色覚異常を持っており、この本の中でマジックを観る側と演じる側双方の視点から自身の体験を実例として紹介し、その対策例も書かれています。私が一番有難かったのは「色のシミュレータ」というアプリを教えてもらったことですね。いくら知識として理解しても、実際のところ相手がどのような見え方をするのかという感覚的な問題は言葉だけではなかなか理解できるものではありませんが、このアプリを使うことで色覚異常の人が普段どのような見え方をしているか疑似体験することができます。このアプリによって自分が演じるマジックの現象が色覚異常の人にどのような見え方をしているかを、手軽にある程度まで理解することが出来るのです。私は自分のマジック(特に色が重要な要素となっている演目)をこのアプリでチェックしてみて多くの発見をすることが出来ましたので皆さんも是非試してみることをオススメします。

ステージやサロンなどでマジックを演じて見せる時は、色覚異常の人の現象を理解できない困惑や反応の薄さが、他の大多数の観客の盛り上がりに埋もれて気にならないかもしれません。でもクロースアップで、たった1人の観客が色覚異常だったとして自分のとっておきのマジックの現象がその人にとって識別できない色の変化だとしたらどうでしょう?観客は何が起こったのか分からず困惑し無反応です…人によっては気を遣って驚いたフリをしてくれるかもしれませんが、明らかに反応は遅く薄いでしょう。私だったらこの状況は怖いし、何より悔しいです。自分が観客に伝えたいことが、ほんの少しの工夫でより大勢に正しく伝わるようになるのですから、やらないと勿体ないです。そのためには自分が当たり前だと思っている感覚が、そうではないという認識をあらためて持つことが大事で、この本はそれを手助けしてくれます。私はこの本を読む前よりも少し世界が広がった気がしました。

筆者がこの本を書いた理由は「私が見えないマジックを見たいから」。知見を深めるためにもオススメです。

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和書,日本語ノート,理論系

Posted by ルーン