Chain Gain(チェーン・ゲイン)
【考案】
ヤマギシルイ 野島伸幸
【現象】
マジシャンは自分の指にチェーンを絡めていき二つの環を作ります。片方の環に指を入れるとチェーンが二重に絡まってアタリとなり、チェーンがするりと抜けてしまうとハズレです。観客はマジシャンがアタリの環を左右どちらにするか絡め方をよく観察して判断しますが、なぜか必ずハズレを引いてしまいます。
チェーンをテーブルの上に置き、どちらかの穴に指を入れてもらってから引っ張り、指に絡まれば勝ち、すり抜ければ負けというパズル的なゲームは昔から欧米のバーなどで小銭や一杯の酒を賭けておこなわれていたバーベットの中でもポピュラーなもののひとつです。
これまでにいくつもの方法が考えられており、素材もベルトを巻いて使ったりロープやネックレスなど様々ですが、そのすべてが仕掛ける側にとってアタリ・ハズレがコントロールできるイカサマです。
この「Chain Gain」も勿論イカサマで、アタリ・ハズレを完全にコントロールすることが可能です。
【長所】
最大の利点はテーブルを必要とせず、どの角度から見られても問題がないため、本当にいつでもどこでも演じられるということです。
またイカサマをする時のシークレット・ムーブは本当にわずかな差異なので普通にやっても気づかれる可能性はかなり低いのですが、ヤマギシルイ氏のプロならではの配慮で観客の意識が自然にそこから離れるようにハンドリングが構成されています。
他にもサトルティやコツ、演出のアイデアや作者二人の対談などとても勉強になる興味深い内容です。
ボーナストリックとして野島氏が解説している「Triple Through」も簡単な割に効果の大きいチェーントリックで、小ネタとしてさりげなく演じたり、ロープマジックのルーティンなどに組み込んでも便利な作品だと思います。
この方が観客も指が入れやすいですし、上下よりも左右の方が自分の意志で選択したという印象を植え付けやすいと思います。
そして後半は観客が左右を選択する前にこちらの指をすべて外してチェーンを上から指先でつまむだけにすることで、私がチェーンを指から外す時に何も怪しい操作ができないことを証明するようにしています。
最初はゲームとして始め、五回やって観客が勝ち越したらご褒美があると言います。
勝敗表も書いていき、観客が負け・勝ち・勝ち・負けで最後に勝って三勝二敗で勝ち越したら、ご褒美としてチェーンが入っていた袋から折りたたんだ紙を渡し、広げてもらうと先ほど書いた勝敗表と同じ戦績が予言されているというものです。
こちらの演じ方の方が私のスタイルに合っているみたいで、最近はクロースアップやテーブルホッピングの場面でとても重宝しています。
【短所】
演じていて特にデメリットと思えるような点も見当たらず、買ってまず損のない作品だと思います。