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The Magic No.58(ザ・マジック)

2022-10-05The Magic(デアゴスティーニ),和書,国内マジック道具,国内映像,技法,映像,,道具カード,クロースアップ,パケット・トリック,メンタル,数字トリック,日用品・その他

書誌情報

発行 デアゴスティーニ・ジャパン
監修 マジシャン・メイガス
発行日 2021/6/01
定価 1,823円(税込)

【セット内容】
冊子(オールカラー12ページ)
DVD(約30分)
絶対当たる心理テスト

基本テクニック講座
カードの扱い方㉙
アスカニオ・スプレッド:5枚(あるいはそれ以上)のカードを4枚しかないように広げて見せる技法です。技法名の通りスペインの代表的マジシャンであるアルトゥーロ・デ・アスカニオ(Arturo de Ascanio)が考案したと言われていますが、原点となる技法は1950年代はじめにエディー・テイトルバウム(Eddy Taytelbaum)が考案しており、フレッド・カップス(Fred Kaps)を通じてその技法を知ったアスカニオがハンドリングを改良してから有名になったため、自然とアスカニオの名が冠されることになったというのが現在の通説のようです。

テント・バニッシュ:アメリカのアマチュア・カーディシャンであるアーサー・フィンリー(Arthur Finley)が考案したカードを消したように見せる技法です。ダイ・バーノン(Dai Vernon)の「Slow-Motion Aces」(雑誌『The Sphinx』1941年3月号、当時は「Mobilizing the Aces」と呼ばれていました)での解説が初出で『Stars of Magic』(1950年)にも紹介されています。後述の「Open Travelers」で有名になりました。

絶対当たる心理テスト(Psychological Test)

14種類の動物がランダムに描かれた4枚のカードを見せて、観客に心の中で好きな動物を決めてもらいますが、マジシャンは観客の誕生日をヒントに心理を読み取って選んだ動物を当ててしまいます。

Higar氏の作品です。原理自体は古くからあるもので、ヨーロッパではC.G.バシェが1612年に発表した「天秤と最小個数の分銅の問題」が有名です。しかし、それよりも400年も前になる日本の平安時代末期には『簾中抄(れんちゅうしょう)』に、この原理を利用した遊びが存在した証拠が記されています。和算においてはこれを「目付字(めつけじ)」と呼び、当時から数当て遊びとして親しまれていたようです。マジックとしては、ロンドンのニコラス・ハント(Nicholas Hunt)が「Newe Recreations」という観客が心に思った数を当てるトリックを1631年に発表しています。1910年にはセオドア・デランド(Theodore DeLand)が数字の代わりにカードを利用する「Million Dollar Mystery」を発表し、その後このトリックは年齢当てカードとして普及しました。デアゴスティーニのこの作品では、かわいい動物のイラストと心理テストを絡めることで数理マジックの印象から遠ざけるように工夫されており、2回連続で演じられるように配慮されています。

オープン・トラベラー(Open Traveler)

4枚のエースを1枚ずつ透明にして鮮やかに移動させてしまいます。

考案者はラリー・ジェニングス(Larry Jennings)。『Expert Card Mysteries』(1969年、Alton Sharpe著)で発表されました。少し話がややこしいのですが、ノーカバーで4枚のエースのみが別の場所に移動するというプロット自体はビル・ミーゼル(Bill Miesel)が「インビンシブル(Invincible)」という作品名で『The New Phoenix No.362』(1961年)に既に発表しています。エドワード・マーロー(Edward Marlo)は、ニール・エライアス(Neal Elias)にひとつしかカバーを使わないエース・アセンブリーを教えてもらい、カバーが無くても出来るかも知れないと考え「オープン・トラベラーズ(The Open Travelers)」を『The New Phoenix No.375』(1962年)に発表しました。その後、1968年にブルース・サーボン(Bruce Cervon)がダイ・バーノン(Dai Vernon)から見えないパームという課題を受け「フェイスアップ・フライヤーズ(Face-up Flyers)」を考案します。この課題はバーノンがジェニングスに見せた「インビジブル・パーム・エーセス(Invisible Palm Aces)」というテーマのアイデアを元にしたものだと当時のサーボンは知りませんでした。その1年後、サーボンは見えないパーム演出とテント・バニッシュ(これもバーノンの提案だったようです)を使った「エアロダイナミック・エーセス(Aerodynamic Aces)」を発表しますが、ミーゼルの「インビンシブル」と同じ構造であるにも関わらずそれをクレジットしませんでした。後年、サーボンは1988年までその作品を知らなかったと『Genii』(1988年4月号)で語っています。そして、ジェニングスの「インビジブル・パーム・エーセス」研究の最終形として「オープン・トラベラーズ(Open Travellers )」というマーローの作品に敬意を示した名称で1969年に発表しますが、よく似た作品名(スペルの違いに注目)から挑戦的と受け取られたのか、ジェニングスの意に反してマーローをひどく怒らせてしまったようです。いつでもどこでも似たような面倒事は起こっていたのですねぇ…。ジェニングスは、その後、紛らわしさを避ける為に「インビジブル・パーム・エーセス」という作品名を正式名称としています。現在どちらの名称も使われてはいますが、どちらかというと「ジェニングスのオープン・トラベラーズ」の方が定着してしまった感があります。

ルーン
ルーン
この辺りの事情は『Jennings ’67』(和書では『ラリー・ジェニングス カードマジック』東京堂出版)でかなり詳しく書かれていますので興味のある人は読んでみてください。ジェニングスはいくつものハンドリングを研究しており、発表した原案は6つ目のハンドリングでした。原案ではパームを使用していますがデアゴスティーニで解説されている手順では技法としてのパームは使用しておらず難易度が下がっています。上記で紹介した本以外に『ラリー・ジェニングスのカードマジック入門』でも原案は解説されていますので比較してみるのも面白いと思います。

 

ペーパーナプキンの復活(Torn and Restored Paper Napkin)

1枚のペーパーナプキンをびりびりに破いて丸め、おまじないをかけて復活させようとしますが、あわや失敗かと思われたところで見事挽回してみせます。

『ターベルコース・イン・マジック第1巻』に紹介されている「チャイニーズ・ペーパー・ミステリー(Chinese Paper Mystery)」が原案です。考案者かどうかは分かりませんが、1898年に渡米して来た中国人マジシャンのチン・リン・フー(Ching Ling FOO)が、漢字が書かれたお札を破り、それを元に戻すマジックを披露し人気を博しました。その後、1914年~1915年のアメリカ・ツアーで、同じく中国人マジシャンのハン・ピン・チェン(HAN Ping-chien)もペット・トリックとして演じていたことから中国では有名なトリックであったようです。デアゴスティーニで解説されているサッカー・トリック演出の考案者に関しては今のところ正確な記述が見つかりませんが、ターベルコースには「日本式・紙の復活」と紹介されており、日本の記録でも木村マリニー(大正8年にデビュー、アダチ龍光の師とも言われています。)他、何人かの日本人マジシャンが得意芸としていたようなので、日本で考えられた演出である可能性は高そうです。

付属マジックアイテム
絶対当たる心理テスト:14種類の動物がランダムに描かれた4枚のカードと、絶対当たる秘密が隠されたカード1枚のセット(考案:Higar)

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