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The Magic No.47(ザ・マジック)

2022-09-26The Magic(デアゴスティーニ),和書,国内マジック道具,国内映像,技法,映像,,道具カード,クロースアップ,メンタル

書誌情報

発行 デアゴスティーニ・ジャパン
監修 マジシャン・メイガス
発行日 2020/12/29
定価 1,657円+税

【セット内容】
冊子(オールカラー12ページ)
DVD(約25分)
インビジブル・デック

基本テクニック講座
カードの扱い方㉕
ティルト(Tilt)または、デプス・イリュージョン(Depth Illusion):カードをデックの中央に差し込んだように見せつつ、実際は特定の枚数目にコントロールするという視覚的にも強烈な錯覚を起こすことができる技法です。エドワード・マルロー(Edward Marlo)のティルトとして有名ですが、現在ではダイ・バーノン(Dai Vernon)のデプス・イリュージョンが先であるというのが定説になっています。このあたりの話は石田隆信氏のコラムで詳しく報告されていますので、そちらをご覧ください。

ルーン
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しかし多くのマジシャンが未だにティルトの名称の方を多用していることを考えると、つくづく命名センスというのも大事だなぁと思います。

インビジブル・デック(Invisible Deck)

演者はカードケースをテーブルに置き、観客に1枚のカードを自由に心の中で思ってもらいます。ケースからデックを取り出したジェスチャーをして想像上のカードをよく混ぜ、思ったカードを1枚抜き出し、ひっくり返してデックに戻し、再びケースに収めたところをイメージしてもらいます。ここで観客に思ったカードが何かを聞き、ずっとテーブルに置いてあったケースから今度は本当にデックを取り出して広げると、表向きのカードの中に1枚だけ裏向きのカードがあります。そのカードがなんと観客が心の中で思ったカードなのです。

考案者はダイ・バーノン(Dai Vernon)。雑誌『Jinx(ジンクス)』49号(1938年)で「1930年に考案した。」と本人が発表しています。ギミックの原理そのものや似たような現象の作品はそれ以前から存在していましたが、心の中で思ったカードが裏返っているというシンプルかつ強烈な現象としたのは紛れもなくバーノンの功績でしょう。実はその2年前の1936年にジョー・バーグ(Joe Berg)がバーノンの作品と同じ構造・演出の「ウルトラメンタル・デック」という商品を発売しています。バーノンが発表した経緯と関係があるのかは分かりません。その後1940年代にエディー・フィールズ(Eddie Fields)が、ウルトラメンタル・デックを演じる際の「見えない透明なカード」演出を考案します。そして1960年代に当時の人気番組トゥナイト・ショーで、ドン・アラン(Don Alan)が演じたのをきっかけに、マジシャンの間でインビジブル・デックは大流行することとなります。

ルーン
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デアゴスティーニでは正面の相手に演じるパターンと、周りを囲まれても演じられるパターンの両方と、すぐにまた別のテーブルで演じられるように演技後にリセットする方法が解説されています。簡単に超強烈な不思議現象が起こせるということもあり、現在でも最強のギミック・デックと語られることが多い傑作です。

アンビシャス・カード(Ambitious Card)

観客が選んでサインした1枚のカードをデックの真ん中に差し込んで揃えますが、おまじないをかけると何度でもデックの一番上に上がってきます。最後にサインカードを折り曲げてクセをつけ、見た目に分かりやすくしますが、それでも一番上に上がってきます。

アンビシャス・カードの歴史は古く、その原形は1800年初頭からヨーロッパ各地のストリートで演じられていたようですが正確な発祥は、まだよく分かっていません。1853~54年にフランス語で書かれた最初のマジック専門書『Nouvelle Magie Blanche Dévoilée, Physique Occulte, et Cours Complet de Prestigitation(新しい白魔術の暴露と完全な名声を得るための道)』の2巻組がポンサン(Jean Nicolas Ponsin)により発刊されます。当時はパスが主流技法でしたが、現在主流となっているダブル・リフトと同じ技法(著者はインビジブル・パスの名称で紹介)を使ったアンビシャス・カードの手順が初めて紹介された文献がこの本というのが定説になっていました(英語の文献ではプロフェッサー・ホフマン(Professor Hoffmann)の『Drawing-Room Conjuring』(1887年)が最初)。この説はジーン・ヒューガード(Jean Hugard)が書いた『Card Manipulations No.2』(1933年)の内容が大元ですが、その後リチャード・ニーブ(Richard Neve)の『The Merry Companion』(1716年)がダブルリフト(アンビシャス・カードの手順かは不明)を最初に紹介した文献とする説もあります。このあたりの話はなかなか複雑なので、詳しく知りたい方はやはり石田隆信氏のコラムをご覧ください(困った時の石田さん頼みばかりですが、他にもアンビシャス・カードに関する興味深いコラムがあるので読むことをオススメします)。とにかく、このダブル・リフトと上記のティルト(またはデプス・イリュージョン)の2つの技法が合わさることによってアンビシャス・カードのルーティンは飛躍的な発展を遂げ、マジシャンの間で人気演目としての不動の地位を獲得することになりました。シンプルで見た目にも分かりやすい現象が何度も繰り返されるこのマジックはアレンジの幅が広く、演者の好みを反映させやすいことも観客と演者双方に人気がある理由です。

ルーン
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デアゴスティーニで解説されている手順では、ホァン・タマリッツ(Juan Tamariz)が1968年に考案したタマリッツ・ターンノーバーや、『Expert Card Technique』(1940年)に「Pop-up Card」(フレッド・ブラウ(Fred Braue)が考案した方法とされているが諸説あり)として紹介された、折り癖を付けたカードが一番上に上がってくるあの有名なクライマックスも丁寧に解説されています。

付属マジックアイテム
インビジブル・デック:特殊加工が施されたギミック・デック。

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